空想商會

日々の記録。料理やカフェや雑貨の話題が多めです。

記憶のカケラ

救出劇

昭和50年代の夏のできごと。 当時、私は大阪府茨木市に住んでいた。今はどうなのか知らないが、その頃そのあたりはずいぶん田舎だった。田んぼの中のあぜ道を通って小学校へ通っていた。 私は転勤族だったので住宅街に住んでいたが、そこでも家と家の間には…

鍋で米を炊く

うちでは、米は鍋で炊いている。 きっかけは、2011年の東日本大震災だった。うちは被災地から離れていたが、東北にある夫の実家が被災した。さいわい夫の両親にケガはなく、家財道具の被害もわずかで済んだ。しかしライフラインの一部が停止した。水道は無事…

Wedding Ring

結婚十年目にして結婚指輪を入手した。 これには深いわけがある。個人的事情なので簡単な記述にとどめるが、結婚後間もないころ私と夫は大喧嘩をした。産後クライシスというやつだ。頭にきた私は怒りに任せて結婚指輪を海に投げ捨てた。 つまり今回購入した…

保温めし

むかし住んでいた寮の名物料理の話。 私が大学時代を過ごしたその女子寮には、各フロアに約20人の学生が暮らしていた。各フロアごとに共有の台所があり、食事は各自自炊していたが、米だけは共同購入しており、2台の炊飯器で適宜炊いておくシステムになって…

アップルティーの午後

アップルティーというものを初めて飲んだのは大学1年のときだった。 何かの折に学生寮の先輩がご馳走してくれたのだ。コンクリート造りの建物のこぢんまりとした台所。珍しく陽が高かったからあれは日曜の午後だったのだろうか。掃除の行き届いていない煤け…

手まり唄

子供の頃の記憶には、普段は忘れているものの、何かの拍子に思い出して「あれは何だったんだろう」とふしぎに思うことがある。 たいていのことはネットで検索すればわかる時代だけど、子供時代のことは記憶自体があやふやなこともあり、うまく調べられないこ…

灯籠流し

お盆といえば思い出すのは、北国の海辺の町の記憶である。 子どものころ、私はその海辺の町に祖父母と一緒に住んでいた。祖父母はサハリン出身で、終戦時にロシア軍の侵攻を受けて北海道に逃れてきた、いわゆる引揚者(ひきあげしゃ)であった。 祖父母より前…

人形の家

ビルの谷間に設けられた駐車場の一角に、その奇妙な店はあった。 街の中心部を横切る通りに面した駐車場の敷地内である。少し奥まった所に簡素な造りの一軒家が建っていた。駐車場の中に一軒家があること自体が奇妙だが、そこに併設されている店はさらに奇妙…

タクシードライバーの話

先日乗ったタクシーの運転手さんの話が興味深かったので、記録。 ☆ …いやあ、ほんっと雪道はヤだよね。除雪するっつってもカネが馬鹿にならないしさ。ほんと雪はカネかかるわ。 襟裳(えりも)岬の方にさ、黄金(おうごん)道路ってあんの。黄金道路。トラック運…