空想商會

日々の記録。料理やカフェや雑貨の話題が多めです。

Wedding Ring

結婚十年目にして結婚指輪を入手した。

これには深いわけがある。個人的事情なので簡単な記述にとどめるが、結婚後間もないころ私と夫は大喧嘩をした。産後クライシスというやつだ。頭にきた私は怒りに任せて結婚指輪を海に投げ捨てた。

つまり今回購入した指輪は二代目だ。初代の指輪は今も海底に眠っている。あるいは食物連鎖に組み込まれ、マグロの一部として南太平洋あたりを周遊しているかもしれない。

夫に買ってもらった指輪を捨てたことについては反省も後悔もしていない。あの時はそうでもしなければ気持ちが収まらなかったからだ。むしろ夫を捨てなかった自分を褒めたい。でも海洋汚染をしてしまったことについては反省している。マグロに悪いことをした。

そんなこともあったけれど、紆余曲折を経て結婚十年目の節目を迎えることができたので、記念に指輪を作りなおすことにした。

同じ事の繰り返しにならないよう費用は自分持ちにした。たとえ再び大喧嘩しても、自分が稼いだカネで買ったと思えば捨てない。思えば最初からこうすれば良かったのかもしれない。

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店に夫の指輪を持っていき、片方なくしたので同じ物を作りなおしたいのですと言ったら、店員さんが丁寧に対応してくれた。幸い店舗に在庫があったので、刻印を含めて二週間で結婚指輪(二代目)は完成した。

店員さんが白い手袋をおごそかにはめて、黒いケースをぱかっと開けて指輪を見せてくれたとき、「やりなおしがきいて良かったなあ」としみじみ思った(高くついたが)。

4ヶ月に一度クリーニングに来て下さいね、と店員さんは言った。指輪に限らずアクセサリーのメンテナンスなんて今までしたことがなかったけど、これからはしようと思った。

夫と一緒に来るのもいいかもしれない。初めて指輪を買ったときのように、夫婦でちゃんとおしゃれして、指輪をぴかぴかに磨いてもらうのだ。それからイノダコーヒか銀座トリコロールに寄って、ふたりで珈琲を飲んで帰ろう。

それがきっと、初代の指輪に対する一番の供養になるだろう。*

(2020/10/26)