先日、展覧会の記事を書いたので、勢いにのって過去の展覧会のことも書いちゃおうと思います。
◼️御大典記念特別展 よみがえる正倉院宝物
目次:
1. 概要
令和元年(2019年)の徳仁天皇の即位を記念して開催された御大典記念特別展。正倉院宝物の精巧な再現模造の数々を一堂に公開していました。
- 会期 2021.09.15-2021.11.07
- 会場 北海道立近代美術館
2. 解説
①正倉院宝物とは?
正倉院(東大寺の宝物殿)に伝えられる、聖武天皇の遺品をはじめとする約九千点の品々です。多くが奈良時代の作で、調度品、楽器、遊戯具、武具、文房具、仏具、文書、染織品など多岐にわたります。
②再現模造とは?
正倉院宝物の複製のことです。ただし単なるレプリカではなく、古代の技法をなぞり制作工程まで忠実に再現されています。
正倉院宝物は約1300年前の遺物ですから、いつ損壊してもおかしくありません。ゆえに、毎年秋に奈良で一部が公開される以外、一般公開はされてきませんでした。
そのため、宮内庁によって宝物の複製品が作られるようになりました。外形を真似るだけではなく、可能なかぎりオリジナルと同じ材料・構造・技法を用いて制作工程をも再現することを目標としています。
再現模造はオリジナルの徹底的な分析から始まります。消失部分は専門家の考証に基づいて補い、分解できない物の中はCTなどハイテク機器を用いて調べます。最新テクノロジーを駆使して、古代の製法を忠実に再現しているのです。
③再現模造をつくる意義は?
まずはオリジナルの消失に備えること。次に古代の技術を後世に残すこと。一連の作業を通して宝物の研究を進めること。一般公開を可能にすることなどです。
経年劣化が少ないぶん扱いやすい再現模造は、一般公開が比較的容易です。皇族と上級国民しか存在を知らない秘宝ではなく、すべての国民がアクセスできる文化遺産として、正倉院宝物を位置づけることが可能になります。経年劣化の激しいオリジナルより、忠実に再現された新品の模造品を見る方が、一般人には価値が分かりやすいという利点もあると思います。
3. 見どころ
現代の名工たちが伝統工芸と最新テクノロジーを駆使して再現した「天平の美」に触れることのできる数少ない機会です。宝物自体はもちろん制作過程もまた見どころと言えましょう。主要作品を5つ挙げるなら、
- 模造 螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)
- 模造 酔胡王面(すいこおうめん)
- 模造 黄銅合子(おうどうのごうす)
- 模造 螺鈿玉帯箱(らでんぎょくたいばこ)
- 模造 黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(おうごんるりでんはいのじゅうにりょうきょう)
中でも、やはり螺鈿紫檀五絃琵琶が白眉です。教科書にも載っている正倉院宝物の代表作ですね。展示されていたのは平成後期の作ですが、現代では紫檀(したん)や玳瑁(たいまい)の国際取引が制限されているため、材料の調達からして困難を極めたそうです。完成に8年の月日を要したといいます。この琵琶を見れただけでも入場料を払った価値がありました。
4. 感想
歴史の教科書に載っていた螺鈿紫檀五絃琵琶、息子に見せることができて良かったです。ヴァイオリンで言ったらストラディヴァリウス以上のレア度ですからね。螺鈿細工が本当に見事でした。宝物自体もさることながら、それを後世に伝えようとする人々の営みにも感銘を受けました。もし生まれかわって職業を自由に選べるなら、こういう仕事をしてみたかったなぁと思いましたね。
5. 購入品
公式図録を購入しました。あと、息子の希望で美術館ガチャを1回分。ミニチュアの埴輪と土器のガチャでした。息子は馬埴輪を引いてましたね。正倉院関係ないけど楽しんでくれたからOKです。*