眠れぬ夜のために小さな物語を書きました。よかったらご笑覧ください。
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『天珠祭』
神代の昔、崑崙山(こんろんさん)に邪神あり、日照り・洪水・疫病等々、人々に災いをなしていたが、荼枳尼天(だきにてん)これを憐れみ、玉珠峰(ぎょくじゅほう)の山頂にて破魔の秘法をおこなった。
たちまち天より宝珠の顕れ出でて、流星の如く人界に降り注ぐを、時の王テンジン、国じゅうの僧侶に命じ、ひとつ残らずこれを集めさせた。集めた宝珠を人々に配り、肌身離さず身につけるよう命じて七年、宝珠を身につけた者はあらゆる災厄・疫病をまぬがれることができた。
七年後、王が七十七歳で天寿を全うすると、人々はこれを悼み、偉大な王の御霊を安らげんと、七日に及ぶ大法要をおこなった。すると天より荼枳尼の顕れて言うには、この宝珠を王の功績と共に子々孫々まで伝えよ、さすれば邪神の魔力及ぶことなく国も家も栄えるであろうと。
これより人々は子孫へ宝珠を伝え、国は盛んになっていった。毎年七月の灯明節、荼枳尼天とテンジン王を祀る天珠祭が行われる。瑪瑙(アゲート)、玉髄(カルセドニー)、瑠璃(ラピスラズリ)、無数の貴石が祭壇と参道に敷き詰められ、灯明に映えて煌めくさまは、世界三大奇祭のひとつに数えられ、訪れる者が後を絶たない。… *