空想商會

日々の記録。料理やカフェや雑貨の話題が多めです。

読んで判断したかった

KADOKAWAジェンダー関連本が刊行中止になったといいます。

『あの子もトランスジェンダーになった』(原題: Irreversible Damage)というアメリカのドキュメンタリーの翻訳です。

内容を知る前に刊行中止になってしまったため曖昧な情報しかないんですけど、出版元の記事によると、アメリカにおけるトランスジェンダー人口の増加と、若年層をターゲットとした性転換治療の問題点について記述した本だったらしい。

近年、アメリカではトランスジェンダーを自認する若者が増え、彼らをターゲットとした性転換治療が広く行われています。適正に行われれば福音であるはずの治療ですが、性転換手術は不可逆的(Irreversible)であるため、治療後に後悔する人が一定数存在するそうです。ある意味マイノリティ中のマイノリティである彼等の、声なき声に耳を傾けてーーという趣旨の本だと理解しました。ただし、実際に読んでないので内容について保証はできません。

アメリカで起きることは日本でも起きる可能性が高いため、医療従事者としてわたしも知っておくべき内容に思えました。

ですが、この本がトランス差別を助長するとして出版関係者から抗議が噴出。事態を重く見たKADOKAWAは本書の刊行中止を決定したということです。

たしかに、邦題は過度にセンセーショナルなきらいがあります。原題 "Irreversible Damage" を直訳すれば「不可逆的損傷」なので、こちらの方が内容を正確に表しているとは思います。(個人的には、不可逆的損傷→訴訟の印象が強いので原題の方がトラウマティックですが)

このあたりの判断はとても難しいですね。なにせ実際に読んでいないので、この本が差別的なのかどうか判断できないのです。版元の記事を読む限りは、むしろ医療の名を騙る弱者ビジネスを告発する内容のように思えるのですが、読んでないからなんとも言えない。ただ昨今のトランス差別の激しさを鑑みるに、邦題や表紙デザインは確かにやりすぎのように思えます。トランスジェンダーの人権より販促を取ったと言われても仕方ないかもしれない。

でも、邦題や表紙はともかく内容は読んでみたかったです。もし版元の説明のとおりラディカルな治療がもたらす負の側面について述べているのならば、それはトランスジェンダー当事者や医療従事者こそ知っておくべき内容だと思うので。トランス差別はもちろん反対ですし、様々な意見があるとは思いますが、本の内容については自分で読んで判断したかったというのが正直な気持ちです。*

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