ヒメウツギの花が咲きました。
すずらんも花をつけています。最初は数株だったのがだんだん増えてきました。 別の場所では芝桜が満開で、フューシャピンクの絨毯のようになっています。今年は涼しいせいか花の日持ちが良いようです。
気づけば庭も随分にぎやかになりました。ここに越してきた時は草1本生えていなかったのですが。そのころ私は産後の体調不良に悩んでいて、庭仕事なんて考えただけで吐き気がするので、「庭は全部アスファルトにしてメンテナンスフリーにする!」と言っていたんですけども。
少し調子がいい時に、「プランターひとつくらい置いておくか」と思ってラベンダーの鉢を庭に置きました。それを見ているうち、「どうせ置くならもうひとつ」「バランス的にもうひとつ」という具合にプランターが増えていきました。
そのうちにプランターでは収まりきらなくなって、地植えをすることになりました。土まみれで植物を植えかえたり、水やりや草むしりをしたり。ふと気づけば、いつの間にか体調が随分回復していました。
もちろん、たまたま回復期だったのだろうとは思います。でも、庭仕事が回復を促進したとも思うのです。①手を動かすこと、②体を動かすこと、③日光に当たること、④植物に触れること、⑤土に触れること、がプラスに働いたのでした。
それまでは現代人の奢りで「そんなんで治ったら苦労しない」なんて思っていたのですが、実際に治りました。つまるところ、人体だって自然の一部だから、自然の摂理に逆らって良好なコンディションを保つのは至難の業なのです。
「土から離れては生きられない」とは、宮崎駿の長編アニメ『天空の城ラピュタ』の有名なセリフです*1。これは単なる自然礼賛ではなく、このあと「それでも人は科学技術を、自然の摂理を超越して自ら神となるための力を追い求めずにはいられない」という意味合いの反論がなされるのですけれど*2、それはともかく。
「土から離れては生きられない」は言い過ぎでも、「土から離れたら生きづらい」は真理と言っていいでしょう。都会の会社勤めの若者が週末に郊外で農業を営んだり、芸能人や作家が中年になって地方移住したりする話を時々聞きますが、あれは一種のセルフヒーリングなのだと思います。
精神医学博士のジョン・J・レイティによると、近年の研究で、 緑地の近くに住む人は不安障害やうつの罹患率が少ないという結果が出たそうです。別の論文では、森林の中を歩くと免疫を高めるナチュラルキラー細胞の数が増えたといいます。室内に植物を置くと脳波上のストレスレベルが下がるという論文もあります。 植物が産生するフィトケミカルという物質が人体に作用する結果ではないかと考えられています。
人類学的な仮説もあります。太古の昔、我々の祖先は森の果実や木の実を食べ、川や湖の水を飲み、獣の襲撃に気づきやすい見通しのよい場所で休息しながら生き延びてきました。その記憶が我々の遺伝子に本能として組み込まれているため、森や水辺や見晴らしの良い場所では「ここは安全。警戒を解いていい」と判断してリラックスするのではないかという説です。
逆にいえば、森林や水辺から遠い場所、見通しの悪い場所では、食糧も水もなく獣が潜んでいる危険もあるため、我々の祖先は気を休めることができなかったでしょう。コンクリートに囲まれた都会の場末の雑居ビルでくつろげる感じがしないのは、治安の問題もさることながら、「ここでは警戒を怠るな」と本能が命ずるせいでもあるのかもしれません。
今は庭をアスファルトで塗り固めようとは思いません。窓から植物が見えるだけでも気分が違うことがわかったので、体が動くかぎり庭の手入れを続けるつもりです。
室内に鉢植えの植物を置くのもメンタルに良いというので、観葉植物もいくつか置きました。パキラの鉢植えとアイビーのハイドロカルチャーです。そのうち料理に使うパセリやミントなどのハーブもキッチンで育ててみたいと思っています。*
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